【遺言書】10通りの効力・記載通りにならないケース

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遺産分割に対する意思表示をしたり、相続を巡るトラブルを未然に防ぐために重要な遺言書ですが、具体的にはどのような効果があるのでしょうか?

本記事では、遺言書の持つ10通りの効力と、遺産分割が遺言書の記載通りに行われないケースについて解説します。

遺言書とは?

遺言書とは、死後、自分の財産をどのように分割するかを指定した手紙です。「遺言」は、一般的には「ゆいごん」と読むことが多いですが、法律上は「いごん」と読まれます。相続の際には、被相続人との関係性に応じて、誰がどれくらいの財産を受け取れるかを定めた「法定相続分」というルールに則って財産を分け合います。しかし遺言書の内容は、この法定相続分よりも優先されることになります。遺言書が法的な効力を持つには、民法が規定する書き方に従って書く必要があります。

遺言書の10通りの効力

遺言には、大きく分けて10種類の効力があります。

  1. 非嫡出子の認知
    遺言者が男性で、非嫡出子、つまり婚姻していない女性との間にできた子供がいる場合、遺言によって自分の子供であると認知することができます。認知された非嫡出子は、配偶者との子供と同じく、相続人に加わることになります。
  2. 寄附行為
    公益団体や学校方針への寄附を、遺言によって行うことができます。遺言書による寄附には、相続税が課税されません。
  3. 特別受益持ち戻しの免除
    相続人の中に、被相続人から生前贈与や遺贈などの「特別受益」を受けていた人が居る場合、これを考慮して財産の取り分を減らす「持ち戻し」という制度があります。この持ち戻しは、被相続人が持ち戻しをしなくても良いという意思表示をしていた場合、免除されることになります。この意思表示を遺言書の中で行うことができます。
  4. 遺産分割の禁止
    最大で5年間、遺産分割を禁止するよう、遺言書で指示することができます。ここでいう「禁止」とは、遺産分割を先送りにすることで、相続そのものがなくなるわけではありません。自分の死からある程度日数を置き、冷静になってから遺産分割を行ってほしいという場面や、相続人の中に未成年者がいて、ある程度成長するのを待ってから分割を行いたい場合などが想定されます。全財産を禁止の対象にすることも可能ですが、「不動産のみ禁止」「金銭のみ禁止」など、特定の相続財産のみを指定して禁止することもできます。
  5. 遺産分割方法の指定または指定の委託
    「Aさんには不動産、Bさんには現金」といったように、どの財産を誰に与えるのかを、遺言書によって指定することができます。また第三者を指名し、遺産分割方法の指定を委託することもできます。しかし指名された人は、それを必ず受けなければいけないわけではなく、指名を拒否することも可能です。その場合は遺産分割協議などを行い、分割方法を決めます
  6. 遺言執行者の指定または指定の委託
    遺言の内容を実現するために必要な手続きを誰が行うのか、指定することができます。この手続きを行う人のことを「遺言執行者」といいます。遺言執行者は1人でも良いですし、複数人を指定することができます。また遺言執行者の指定も、第三者を指名して委託することができます。
  7.  相続分の指定または指定の委託「Aさんには財産の1/3、Bさんには1/4」といったように、相続の割合を指定することもできます。またこの指定も、第三者を指名して委託することができます。
  8. 遺留分の減殺方法の指定
    遺留分の減殺方法について、遺言書によって指定することができます。相続人には、被相続人との被相続人との関係性に応じて、最低限相続できる財産が保証されています。この保証されている財産を「遺留分」といいます。もしも遺言書の内容によって遺留分が侵害されてしまった相続人がいる場合は、「遺留分減殺請求」という手続きを行うことによって、自らの遺留分を請求することができます。遺留分滅殺請求は、遺言書によって財産を相続した人に対して行われます。この時、誰が相続したどの財産を、どの順番で遺留分の支払いに充てていくかというのかを、遺言書によって指定することができます。これが「遺留分減殺方法の指定」です。
  9. 祭祀主催者の指定
    法事を主催や、お墓や遺骨の管理、菩提寺のやり取りなどを誰が行うのか、遺言書によって指名することができます。これらを行う人のことを「祭祀主宰者」といいます。祭祀主宰者が譲り受ける系譜、祭具、墳墓などは、相続の際、相続財産とは別に扱われます。
  10. 財産の処分、遺贈
    相続財産の「処分」とは、「不動産を売ってお金に変える」など、財産の価値を維持したまま性質を変えることを指します。これについても遺言書によって定めることができます。また遺言によって、財産を特定の相続人や、相続人ではない人に送ることもできます。これを「遺贈」といいます。

遺言書の記載通りにならない場合も

遺言書を用意しても、記載された通りにはならない場合があります。

  1. 遺留分を侵害している場合
    前述の通り、相続人には被相続人との関係性に応じて、最低限相続できる遺留分が保証されています。遺言書の内容に従った結果、遺留分が侵害されてしまった相続人がいる場合は、「遺留分滅殺請求」という手続きを行うことで、侵害された遺留分を請求することができます。遺留分が認められている相続人は、被相続人の配偶者、子供、両親です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
  2. 遺言書が無効となる場合
    遺言書には、公証役場で公証人に作成してもらう「公益証書遺言」、自筆の「自筆証書遺言」、自筆した上で交易役場に知らせる「秘密遺言書」の三種類があります。このうち自筆証書遺言と秘密遺言書は、遺言書が自筆で作成することが可能ですが、民法が定めるルールに則って書かれていないものは法的な効力持つことができないので、注意が必要です。
  3. 共同遺言のケース
    仲の良い夫婦などのであれば、「共同で1つの遺言を残したい」と考えることもあるかもしれません。しかし2人以上の人が1つの遺言を共同で残すことは、民法975条によって禁止されています。これを「共同遺言の禁止」といいます。共同遺言の禁止に抵触した場合は、遺言書そのものが無効になってしまいます。
  4. 代理遺言のケース
    自筆証書遺言、秘密遺言は、必ず本人が自筆で執筆したものでなければいけないというルールがあります。代理の人に執筆させた「代理遺言」は無効になってしまいます。これは遺言書の偽造や変造を防ぐためです。

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まとめ:遺言書の10通りの効力と記載通りにならない2つのケース

遺言書が持つ効果は、大きく分けて次の10種です。

  1. 非嫡出子の認知
  2. 寄附行為
  3. 特別受益持ち戻しの免除
  4. 遺産分割の禁止
  5. 遺産分割方法の指定または指定の委託
  6. 遺言執行者の指定または指定の委託
  7. 相続分の指定または指定の委託
  8. 遺留分の減殺方法の指定
  9. 祭祀主催者の指定
  10. 財産の処分、遺贈

遺産分割が、遺言書のとおりにならないケースには以下のものがあります

  1. 遺留分を侵害している場合
  2. 共同遺言、代理遺言など、遺言書が無効になる場合