【兄弟の相続】代襲相続人・ケース別の法定相続分

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相続といえば被相続人の配偶者や子供に財産を受け継がせる、というのが一般的なイメージにあるかもしれません。しかし、被相続人の兄弟姉妹にあたる自分は相続の際に財産を分割してもらえるのか。そしてもらえるのであればその割合はいくらなのか。このようなことを考えるけれど、実態を知らないという人は多いです。本稿では兄弟姉妹のケース別の法定相続分、遺留分の有無や兄弟姉妹が志望している場合の相続人についてまとめて解説していきます。また、遺産分割の4つの方法についても併せてご紹介します。

兄弟が相続することはできる?

財産を分割する相続では、相続人の範囲と、相続できる割合が民法で定められています。法律上、相続できる人物を「法定相続人」と呼び、彼らが受け取れる財産を「法定相続分」と言います。家族構成によって法定相続人は異なりますが、その法定相続人には相続できる優先順位が決められています。被相続人の配偶者は必ず法定相続人になり、次に子供、父母・祖父母、兄弟姉妹という順番ですが、家族構成によっては兄弟も相続することができます。兄弟が相続できる家族構成とは、相続人が配偶者と兄弟姉妹のみの場合もしくは兄弟姉妹のみの場合に限られます。

以前は家督相続が当たり前

明治の終わり頃から昭和の中頃までは、家督相続という相続が当たり前に行われていました。家督相続とは、戸籍上の家長である戸主がもっていた権利や地位を、嫡出子である長男一人に相続させるというもので、他に兄弟や姉妹がいたとしてもすべての財産を長男が受け継ぐ決まりになっています。家督相続人は新たな戸主として家や一族を守るため、立場上、絶対的な権限を持っていました。また、家督相続は必ずしも被相続人の死後行われるものではなく、戸主の隠居や、入夫婚姻という、今で言う婿入りの際にも家督相続が発生する場合がありました。家督相続では原則、長男がすべての財産を相続する決まりですが、長男がいなかった場合でも相続をする人物は明確に決められていました。この制度は昭和22年に廃止され、現代では家督相続は行われていません。

法定相続人とは

法定相続人とは、前述の通り、民法で定められた相続人のことを指します。血族関係のある人物が亡くなった場合、相続が起こります。その際、誰がどのくらいの財産を相続するのか、そもそも誰が相続できるのかなど、様々な疑問や問題が出てくると思います。血族関係のある人物がそれぞれ好き勝手に財産をもらったり分割したりすることはできませんし、金銭が絡む問題のため相続争いになってしまうこともあります。そのようなトラブルを回避するために法定相続人と、相続人が受け取れる法定相続分というものが定められているのです。

配偶者は必ず相続人になる

法定相続人で重要なことは、被相続人の配偶者は常に相続人になる、ということです。法定相続人に優先順位があることは先述しましたが、被相続人に配偶者がいた場合、その人は確実に財産を相続できる権利を持っています。子供や父母といった法定相続人には相続の優先順位が付けられ、それに応じた財産の分割が行われます。

法定相続人の順位

配偶者の他に、法定相続人として被相続人の子供、父母・祖父母、兄弟姉妹が挙げられます。高順位の人物から順に相続するため、低順位の人物が相続できない可能性もあります。

配偶者の次に優先順位が高いのが、被相続人の子供ですが、子供がいない場合、もしくは先に死亡している場合は孫や曾孫といった直系卑属が相続することになります。その次に優先度の高い父母がなくなっている場合は、祖父母、曾祖父母といった直系尊属が相続します。このような制度を代襲相続と言います。

兄弟の法定相続分はどの程度?

それでは実際に兄弟が相続できる場合、法定相続分の割合はどのようになるのでしょうか。兄弟の法定相続分は家族構成によって異なります。

そもそも兄弟が相続できる家族構成は、

  • 相続人が配偶者と兄弟姉妹のみ
  • 相続人が兄弟姉妹のみ

上記2パターンに限られます。

法定相続人が被相続人の「配偶者、兄弟」のケース

この場合、配偶者の法定相続分は3/4です。そして兄弟の法定相続分は1/4と定められています。兄弟が複数人いるときは原則、法定相続分を頭割りで等分した割合を受け取ることになります。

相続財産が3,000万円だった場合、

  • 配偶者の法定相続分は3/4・・・2,250万円の法定相続分
  • 兄弟姉妹の法定相続分は1/4(例えば、兄弟が2人いる場合は、1/8となる)・・・750万円の法定相続分(兄弟が2人いる場合は、375万円)

という割合になります。

法定相続人が「兄弟のみ」のケース

この場合、兄弟はすべての財産を相続することができます。被相続人に配偶者や子供、父母がいない場合の相続では、法定相続人である兄弟姉妹が全財産も受け継ぐことになります。兄弟姉妹が複数人いる場合は、均等に人数分で分割します。

兄弟が養子のケース

兄弟のうちの一人が養子である場合を見てみましょう。養子には「普通養子縁組」「特別養子縁組」という2つの制度がありますが、どちらも養親と法的な親子関係を結ぶことになるので、養子であっても法定相続人になることができます。また、養子は実子と同様の相続権を持ち、同等の法定相続分を受け取ることが可能です。法定相続人が、被相続人の配偶者や兄弟の場合、兄弟の中に養子がいたとしても財産を相続できますし、兄弟のみの場合でも同様です。

被相続人の兄弟が死亡している場合は?

既にご説明した通り、被相続人に配偶者や子供あるいは孫、親、祖父母などの相続人がいない場合、残るは兄弟が法定相続人となります。しかしこの兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合は、甥や姪が相続権を持ちます。

兄弟の子(甥、姪)が代襲相続する

法定相続人が相続時に死亡している場合では、代襲相続という制度により生存している孫や曾孫、祖父母、曾祖父母などが財産を相続します。兄弟が亡くなっている場合、兄弟姉妹の子である、甥や姪が相続することになりますが、この時の相続割合はどうなるのでしょうか。

甥や姪が相続するときの相続割合は、基本的に非代襲者、つまり兄弟姉妹の法定相続分を代襲者がそのまま受け継ぐことになります。甥や姪が複数人いる場合は通常通り人数分を均等に分割して相続します。被相続人の配偶者が生存している場合では1/4、配偶者も亡くなっている、もしくはいない状況で甥や姪のみが相続する場合では、全財産を分割するということです。

兄弟の子(甥、姪)が養子でも代襲相続できる

兄弟の子が養子だった場合でも代襲相続は可能です。きちんと生前に兄弟姉妹と養子縁組をしていれば、普通養子縁組でも特別養子縁組でも相続権を持っていることになります。

前述の通り、養子縁組をした子供は養親となる人物と法律上でも親子関係を成立したことになるので、実子と同等の権利を持っています。ですから、この際の法定相続分も実子と同様です。

法定相続分はあくまで目安!?

法定相続分は民法で定められているため、財産を分割する際にはその相続分に従わなければいけないと思う人もいるかもしれません。しかしあくまでも法定相続分は目安にすぎないので、法定相続人全員が合意すれば自由に分割しても良いのです。

ここで注意しなければいけないのは、被相続人によって遺言書が書き残されていたり贈与があったりした場合や、遺産分割協議で法定相続分に合意しない人がいる場合などです。法定相続人が財産の分割に異議申し立てをするようであれば最悪の場合、相続争いになってしまう可能性もあります。

被相続人の意思を尊重したり、法定相続人の意見を汲み取ったりと大事なことは色々ありますが、どうしても解決が難しいようであれば弁護士に依頼するなどして、法的な解決を試みるようにしましょう。

遺産分割の4つの方法

相続が行われる際、被相続人の財産は一度法定相続人全員の共有財産になります。これを各相続人が協議した上で分割していくわけですが、このことを「遺産分割」と言います。遺産分割は特に期限などが設けられているわけではないので、相続人は財産をどうするか自由に話し合うことができます。

しかし現金は分割できても、土地や証券は分割するのが難しいですよね。そうかと言ってあやふやなまま放置していては、後にトラブルになってしまう可能性もあります。相続人同士の争いやトラブルを防ぐためにも、数種類ある遺産分割の方法を知ることは重要なことです。ここでは、4種類の遺産分割についてご紹介していきます。

1.現物分割

現物分割とは、「相続財産を売却することなく、特定の財産をそのまま相続人の間で分割する」という方法です。特定の財産とは、土地や車といった現物のことを指しており、相続人はそれらを直接相続することになります。

しかし現物はそれぞれ金額や大きさといった違いが大きいため、ものによって取得格差が生じてしまうことがあります。その場合は、過不足を補うために財産の一部を売却して調整したり、多く相続した人が自費で賄ったりします。例えば被相続人が残した財産が、

  • 現金
  • 不動産(土地や家)
  • 貴金属類(ネックレスやリング、宝石など)
上記のようなものであったとします。相続人は配偶者と子供が2人の場合、配偶者が現金を、一人目の子供が不動産、二人目の子供が貴金属類を相続する、というのが現物分割です。

2.換価分割

換価分割とは、「相続財産を売却して、そのお金を相続人の間で分割する」という方法です。その名の通り財産をお金に換えて相続するので、現物分割と比べて取得格差が出にくいというメリットがあります。しかし財産を売却する際の手数料や、譲渡所得税などに注意しなければなりません。

例えば不動産を売却するには不動産業者に仲介してもらう必要があったり、各種税金がかかったりするので実質相続できる財産の割合が少なくなってしまうこともあります。例えば被相続人が残した財産が、

  • 現金
  • 株式
  • 不動産

上記のようなものであったとします。換価分割では実際に、株式と不動産を売却して手に入れた金額と1現金を合わせた合計を相続人で分割します。

3.代償分割

代償分割とは、「相続人の一人が現物を取得する代わりに、その価値を金銭で精算する」という方法です。この方法で分割する相続は、被相続人の財産に不動産が含まれているケースが多く、不動産を相続した人物はそれに対する代償金を他の相続人に支払わなければいけません。例えば被相続人が残した財産が、

  • 2,700万円の価値がある不動産

上記のようなものであったとします。三人の相続人がいた場合、一人が不動産を相続してしまうと残りの二人には相続する財産がなくなってしまいます。それでは平等な遺産分割が成立しません。不動産の価値は2,700万円ですから、三人で割って一人当たり900万円を取得することができるはずです。

つまり不動産を相続した人物は、二人の相続人に対して900万円ずつを現金で支払うことになります。代償分割をする際は、財産を多く相続した人物に代償金が支払える能力があるかどうかも重要なポイントです。

4.共有分割

共有分割とは、「相続人が共同で相続財産を所有する」という方法です。この方法では、財産の一部または全財産を相続人が共有して受け継ぐことになります。遺産分割の中では最終手段として考えられている共有分割ですが、土地や家などの不動産や車などの現物を共有財産として分割してしまうと、トラブルや問題の起こるリスクが高まります。相続の時点で問題が解決されず先延ばしになってしまう可能性もありますし、実際に相続人同士の関係が悪化してしまうというケースも多いです。例えば被相続人が残した財産が、

  • 不動産(土地)

であったとします。二人の相続人がいた場合、相続人は各々1/2の割合で土地を分けることになります。実際にどこからどこまでが誰の土地、というように線引きをすることはできませんが、その土地を二人の共有財産として管理することになるのです。しかし共有分割は後々相続人の間で問題が起こる場合も多いので、あまりおすすめできる分割方法ではありません。

遺言書で争いを回避

相続人の間で相続争いが起こるのを防ぐために、遺言書を書き残すという方法があります。被相続人の多くは、そのような願いを込めて遺言書を書きます。ただし遺言書で相続争いを回避することもできますが、同時に書き方次第では争いを起こす火種になってしまう危険性もある、ということをきちんと理解しなければいけません。

遺言書に、どのように財産を分割するかを書くことは大事ですが、それに加えて家族への思いを書くことが重要です。分与の割合を決める理由となった出来事や、残された家族にどのようにあってほしいか、感謝や謝罪など、文章から被相続人の思いを汲み取れるような遺言書を残しましょう。

このような遺言書を被相続人が生前に残しておくことで、相続人同士が争うことなく財産を分割できるのです。遺言書内の被相続人の思いや考えは尊重されるべきものですが、それがあまりにも不平等である場合、遺留分という権利によって法定相続人には最低限の財産が分与されます。

遺言書は遺留分を侵害することはできません。また、遺言書の中で、被相続人は遺留分を下回る金額を指定することもできないので書く際には注意が必要です。

兄弟には遺留分が存在しない?

前項で書いた通り、遺言書には遺留分より少ない金額を書くことができません。また、遺留分を主張できる相続人は、最低限の財産を受け取る権利があります。遺言書の内容が相続人の遺留分を侵害していてもそれは認められませんし、遺留分減殺請求を行えば財産を受け取ることが可能です。しかし兄弟姉妹にはその遺留分が存在しません。

兄弟には遺留分がない

遺留分は民法で定められている法定相続分よりももらえる金額が少なくなってしまうケースもあり、それが原因で相続争いになってしまう場合もあります。また、先述した「兄弟姉妹には遺留分がない」という事実を知らずに遺留分を請求してトラブルになるケースも多くあります。

兄弟に遺留分がないということは民法第1028条に記されています。遺言書の内容が「兄弟姉妹には相続しない」というものであれば、兄弟姉妹には遺留分を主張することもできないので、残念ながら財産の相続ができません。

その理由として、法定相続人の優先順位や兄弟姉妹の代襲相続が関係しているとされています。それでは兄弟姉妹を除いた配偶者、子供、親の遺留分の割合はどうなっているのでしょうか。相続人が誰か、その場合の遺留分の割合はいくらかを下記にご紹介します。

  • 配偶者のみの場合・・・1/2
  • 子供のみの場合・・・1/2
  • 配偶者と子供の場合・・・配偶者1/4 子供1/4
  • 配偶者と直系尊属(父母)の場合・・・配偶者1/3 直系尊属(父母)1/6
  • 直系尊属のみの場合・・・1/3

 

まとめ

・兄弟は法定相続人順位3位、配偶者は必ず、子供1位、親2位
民法では相続できる人物として法定相続人を定めており、法定相続人には優先順位をつけています。配偶者は必ず相続人になりますが、その次が子供、次に父母(親)、最後に兄弟姉妹となっています。この順位と家族構成によって、相続できる財産があるかどうかも変わってきます。

・法定相続人が被相続人の「配偶者、兄弟」のケースの相続割合
このケースでは、配偶者の相続分は3/4、兄弟姉妹の相続分は1/4です。兄弟が複数人いる場合、1/4の相続分を頭割りして分けます。

・法定相続人が被相続人の「兄弟のみ」のケースの相続割合
このケースでは、兄弟姉妹は全財産を相続することができます。兄弟が複数人いる場合、全財産を頭割りして分けます。

・兄弟がいない場合、兄弟の子(甥、姪)が相続する
兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合、兄弟姉妹の子である甥や姪が相続することになります。これを代襲相続と言います。

・遺言書で、兄弟との相続トラブルを回避できる
相続では土地や証券、金銭などといった価値のあるものを扱います。そのため相続争いになるケースも非常に多いです。被相続人が生前に遺言書を残しておくことで相続トラブルを回避できる可能性があります。書く内容には十分注意しましょう。

・兄弟には遺留分が存在しない
遺言書に「兄弟姉妹には相続しない」と書かれていた場合、兄弟姉妹には遺留分が存在しないので相続できなくなります。遺留分とは法定相続人がもらえる最低限の財産を保証するものではありますが、これは兄弟姉妹には認められていません。

今回は兄弟の相続についてまとめました。法定相続人に順位があること、被相続人との位置関係によって変わる法定相続分。兄弟姉妹には遺留分がないことなど、自分がどの立場にいるかによって、相続が変化するのをお分かりいただけたかと思います。

相続は金銭が絡んだデリケートな問題でもあります。被相続人は生前に遺言書について学び、きちんとした内容を書き残すことで少しでも相続争いを防ぐように努めましょう。そして相続人も自分の相続割合や相続に関する知識を身につけて、ふさわしい行動を取るようにしましょう。