特別養子縁組の相続は普通養子縁組と何が違う?

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養子縁組制度には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つの制度があることをご存知でしょうか。どちらも一般的な家庭とは少し異なる親子関係であることに違いはありませんが、具体的にその2つの養子縁組制度はどのように違うのでしょう。今回は2つの養子縁組制度の概要や違い、特別養子縁組の相続について具体例を交えながら解説していきます。

特別養子縁組とは

特別養子縁組は、原則、6歳未満の子供が対象の養子縁組制度です。子供の福祉のための側面が強く、その必要性が高い場合、子供の実親との親子関係を終了させて新たに養親と親子関係を結びます。

この制度の最大の特徴は、子供と、その子供の生みの親である実親の法的な親子関係を消滅させることにあります。そして新たに養親と法律上で親子関係を結ぶことで養親の実子と同じ扱いを受けることができます。

特別養子縁組は、実親に育ててもらうことができない、実親に養育能力がないなど、何らかの事情によって子供に不利益が被るのを防ぐための制度です。ですからただ単に、跡取りがほしい、五体満足の健康な子供がほしいといった、自分本位の目的では申し立てを認められることはありません。

実の親子関係と同じ関係を築くことになるので、家庭裁判所は子供にとって安定した養親子関係を成立させる必要があります。もし成長する過程で、子供の病気や障害が発覚したり精神的な問題が生じたりしても、結ばれた親子関係に責任を持って育てていかなければならないのです。

特別養子縁組の手続きや条件

次に特別養子縁組の手続きの流れを見ていきます。特別養子縁組をするためには家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。家庭裁判所の審判を受け、認可されてようやく養親子関係になることができるのです。以下に順を追って手続きについて書いていきます。

子供を探す

先ず、特別養子縁組をする子供を探します。これは児童相談所の斡旋もしくは民間団体の斡旋を受けることで保護を求めている子供と出会うことができます。

児童相談所の場合

児童相談所では、研修を受けて里親登録をする必要があります。特別養子縁組を前提とした研修が児童相談所によって行われますので、これを受けて初めて子供と交流ができるようになります。一定期間は施設に通って子供と交流を深め、それが終了したら次は家庭で預かって実際に養育を始めます。

問題がないようであれば、ようやく家庭裁判所に特別養子縁組を申し立てることができます。この期間は、家庭によって異なりますが、およそ8ヶ月〜1年です。これらの経済的負担は税金で賄われるため、一切ありません。

民間団体の場合

民間の養子縁組団体や医療機関から子供を探す場合、児童相談所とは違って、子供と事前に交流をしたり面会をしたりといった期間がほぼありません。また、子供の多くは新生児や乳児であることも多いです。

民間団体では、子供を斡旋する際それぞれが独自の研修体制や審査方法を備えているため、その基準や費用が施設によって異なる場合があります。高額な費用がかかることもあるので、事前に確認しておきましょう。

家庭裁判所に申し立てる

申し立てには、申し立て費用として収入印紙800円分と郵便切手が必要になります。郵便切手は特に必要ない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

また、費用と一緒に必要書類を持参します。必要な書類は、申立書と、養親となる人物、養子となる人物、養子となる人物の実父母、4人の戸籍謄本です。すべての戸籍謄本は全部事項証明書のものを用意しますが、養子となる人物の実父母の戸籍謄本は養親には取得が難しいため、児童相談所や民間団体に相談するようにしましょう。

審査から特別養子縁組の確定まで

住んでいる地域を管轄する家庭裁判所で申し立てを行い、そこで養子縁組をする際の条件を審査されます。特に問題がないようであれば申し立てが受理され次に調査が始まります。

この手続きでは、養親となる人物が実際に家庭裁判所に行き、申し立ての動機や養子となる人物との関係性、養育期間などを聞かれます。これが終わると今度は家庭裁判所の職員によって家庭訪問が行われます。この他にも家庭裁判所の職員は、児童相談所や民間団体にも申し立ての動機や経緯などを確認したり、実親から特別養子縁組の同意を取り付けたりします。

特別養子縁組は実親との法的な親子関係を終了させることになる特殊な制度のため、実親の同意が不可欠です。同意が得られない場合、特別養子縁組が却下されてしまうこともあります。

審査や調査手続きが無事に終わると、裁判官により内容が精査され、その後結果が書面で通知されます。認可の通知が届いたら10日以内に、家庭裁判所の審判書(謄本)と確定証明書を持って住んでいる地域の市町村役場の戸籍課に特別養子縁組届を提出します。

以上が特別養子縁組をする際の大まかな流れになります。特別養子縁組は、家庭裁判所により養子縁組を認められないと成立しないということを先にご説明しましたが、実際に審査を受けるにはどのような条件をクリアしている必要があるのでしょうか。

養親に配偶者がいる

養親に配偶者がいない場合、申し立てをすることはできません。

養親は原則、25歳以上、養子は原則、6歳未満

養親は原則、25歳以上でなくてはいけません。しかし養親の一方が25歳以上であれば、配偶者は20歳以上でも申し立てをすることができます。

養子は原則、6歳未満までと定められています。例外として、6歳未満から養親が監護している子供であれば、8歳未満まで申し立てをすることができます。

6ヶ月以上の試験養育期間が必要

養親は、試験養育期間として養子を継続して6ヶ月以上養育します。6ヶ月以上が経過していないと、特別養子縁組は認められません。

離縁は原則、禁止

一度特別養子縁組を結んだ養親子関係を離縁されることは原則、認められていません。

普通養子縁組と特別養子縁組の違い

特別養子縁組の手続きや条件についてお分かりいただけたかと思いますが、ここでは特別養子縁組の一体何が特別なのか、普通養子縁組とはどんな違いがあるのかをご説明していきます。

養子縁組の同意、成立条件

普通養子縁組は、基本的に養親と養子の間に縁組をする意思があることと、市区町村役場に養子縁組の届け出をすることによって成立します。実親が養子縁組に不同意でも、養子が15歳未満であれば法定代理人の承諾で成立しますが、養子となる子供が未成年で、養親となる人物の直系卑属でない場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。

特別養子縁組は、家庭裁判所の審判で認められれば成立しますが、それには必ず実親の同意が必要です。

親子関係

普通養子縁組の親子関係はそのまま継続されます。つまり、実親との親子関係に加えて、養親との親子関係が成立するということです。

一方で特別養子縁組は、実親との親子関係は終了され、新たに養親と法律上の親子関係が成立します。

養親の年齢

普通養子縁組は、養親の年齢が20歳以上であることが必須です。

特別養子縁組は、原則25歳以上となっており、配偶者の一人は25歳以上であることが必須です。その場合、片方が20歳以上であっても申し立てをすることができます。

配偶者の有無

養親となる人には、普通養子縁組の場合、配偶者は必要ありません。男性もしくは女性、どちらか片方のみでも申立てが可能です。

特別養子縁組は、配偶者がいることは必須です。男性もしくは女性、どちらか片方のみでは申し立てをすることができません。

養子となる子の年齢

普通養子縁組の場合、養子となる子の年齢制限はありませんが、成立条件として、15歳未満の子供では法定代理人の承諾が必要になります。また、養子となる子が未成年の場合、養親となる人の直系卑属でなければ家庭裁判所の許可が必要です。

特別養子縁組は、原則6歳未満の子供が対象です。その理由として、健全な親子関係の形成には子供の乳幼児期をどのように過ごすかが大きく関わってくるためです。ただし養親が、養子となる子供を6歳未満から養育していた場合に限り、8歳未満までなら申し立てをすることができます。

法定相続人の数

被相続人に養子がいる場合、法定相続人数に含められる養子の人数には限りがあります。普通養子縁組は、被相続人に実子がいる場合、法定相続人に含める養子は一人までです。実子がいない場合は二人まで含めることができます。

特別養子縁組は、養子が実子扱いになるので、養子の人数分を法定相続人に含めることができます。

離縁

普通養子縁組は、養親と養子が協議した上で離縁することができます。離縁には離縁届を出す必要があります。

一方で特別養子縁組は、原則離縁が認められていません。離縁するには再度家庭裁判所で手続きを行います。後ほど詳しく書いていきますが、離縁の要件は厳しいです。これらが普通養子縁組と特別養子縁組の主な違いです。また、戸籍上での表記が異なるのも特徴です。普通養子縁組は、養子や養女と表記がされますが、特別養子縁組の場合、養子は長男長女などと表記されます。

特別養子縁組の相続権

特別養子縁組をした場合、養子となる子は実親との法的な親子関係を終了させ、新たに養親と法的な親子関係を結びます。それと同時に養子は養親の財産を相続する権利を取得します。

特別養子縁組は、子供の福祉の側面が強く、家庭裁判所に認められるには普通養子縁組よりも厳しい条件をクリアしなければなりません。養子縁組が認められれば、実親との法的な親子関係が終了するため、実親の相続権や相互扶養義務は喪失、一方で養親の相続権や相互扶養義務を取得することができるのです。

特別養子縁組をした養子は、実子と同等の相続権を持ち、実子と同じように相続することができます。

実の親が亡くなった場合、1円も相続できない

特別養子縁組をすると、養子となる子とその実親の法的な親子関係は消滅します。そのため実親子間の相続権も同じく消滅してしまいます。つまり養子となる子の実親が亡くなっても相続はできないということです。

例えば、特別養子縁組をした子の実親が亡くなった場合、被相続人に配偶者と子供が二人いたとします(仮にAとBとします)。相続財産が10,000万円あるとして、配偶者の法定相続分は1/2なので5,000万円となります。また、実子Aの法定相続分は1/4で2,500万円、実子Bも同様に1/4で2,500万円をもらうことができます。

しかし相続権を失った特別養子縁組をした子供は相続権を持たないので1円ももらうことはできません。実親が亡くなったとしても、相続割合は0%です。

特別養子縁組をした場合の兄弟の相続権

特別養子縁組をした家庭に既に実子がいた場合の相続はどうなるのでしょうか。例えば、養子先の家族構成が父、母、子供二人(仮にAとBとします)の場合、特別養子縁組をした子を合わせて子供は合計で3人になりますよね。その場合は子供の相続分である財産の1/2を3人で分けることになります。

なぜなら特別養子縁組をした子供は実子と同じ扱いになり、同等の相続権や相続分を持つからです。また、特別養子縁組をした子供は兄弟の相続を受けることもできます。

そもそも法定相続人には優先順位というものがあり、妻や夫といった配偶者は最も優先度が高いです。その次に子供、さらに直系尊属と言われる父母、祖父母、最後に兄弟姉妹となります。

特別養子縁組を解消したい場合は?

基本的に特別養子縁組を離縁することはできません。しかし家庭裁判所の手続きを再度することで離縁が可能ではあります。離縁を認められるのは一定の理由がある場合のみで、家庭裁判所で審判を受けて決定がなされます。

離縁を認める条件は、民法817条の10で2つ定められています。

  1. 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
  2. 実父母が相当の監護をすることができること

養子の福祉のための制度ですから、養子に不利益が被るということが認められるときには、家庭裁判所が当事者を離縁させることができます。

離縁を請求できる権利があるのは、養子、実父母、または検察官で、養親は含まれません。離縁が成立すると、離縁した日から、生みの親である実父母との親子関係が復活します。つまり特別養子縁組の成立によって一度法的な親子関係を終了した実親と、再度法的な親子関係を結ぶということになります。

特別養子縁組の相続のまとめ

特別養子縁組の意味について

特別養子縁組は、養子となる子とその実親との法的な親子関係を終了させ、新たに養親と法的な親子関係を結ぶ特別な制度です。子供の福祉の側面が強く、原則6歳未満の子供が対象で、養子となる子が幼い頃から養子縁組をすることで健全な親子関係が築かれることを重要視しています。

試験養育期間を経たり、家庭裁判所から厳しい審査や調査を受けたりして認められれば養子縁組が成立します。

特別養子縁組をした人の相続権

特別養子縁組をした子供は、養親となる人物やその子供の相続を受ける権利を取得できます。その場合法定相続分は、実子と同等になります。しかし生みの親である実父母の相続は受けることができません。

特別養子縁組をした養子先の兄弟の相続をする可能性がある

法定相続人には優先順位があり、その順序は、配偶者→子供→直系尊属(父母、祖父母)→兄弟姉妹となっています。既に祖父母や父母が亡くなり、被相続人である兄弟にも配偶者や子供がいなければ、残された法定相続人として兄弟の財産を、養子縁組をした子供も相続することができます。

特別養子縁組を結んだ養親子は、法律上でも新たに親子関係を結ぶことになります。普通養子縁組とは違って、審査条件も厳しいことから、特別養子縁組をするのは簡単なことではありません。手続き方法や試験養育期間なども重要ですが、特別養子縁組をするときには相続の問題もしっかりと理解しておく必要があります。