特別受益とは?対象財産や計算方法などの知っておくべき5つの知識

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相続人の中に、被相続人から多額の遺贈や生前贈与を受けた人がいる場合、そうでない人と同じだけの財産を相続するのでは平等性を欠きます。
例えば兄弟の中でも、学費の援助を親から受けて大学に通ったり海外留学した人を、大学に通わず学費の援助を受けなかった人が、相続の場面では同じだけの財産を受け取るのでは不公平です。本記事では、そういった不公平を是正するための制度について紹介します。

特別受益とは?

ある相続人が、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた場合、この受けた利益を「特別受益」と呼びます。特別受益を受けていた相続人は、その額に応じて受け取れる財産が減額されます。

特別受益の請求の流れ

ある相続人が、特別受益を受けていた他の相続人に対して特別損益を請求する場合の流れについて解説します。

  1. 特別受益に関する証拠を集める
    まずは特別受益があったことを証明する証拠を集める必要があります。贈与があったことを示すメールや手紙、契約書やメモなどが残っていれば、有力な証拠になります。
  2. 遺産分割協議
    相続人同士で財産の分け方について話し合う「遺産分割協議」の場で、集めた証拠を元に特別受益を請求します。協議の結果、特別受益が認められた場合は、特別受益を考慮した財産分割を行うことができます。
  3. 遺産分割協議書の作成
    特別受益を考慮して、それぞれの相続人が受け取る財産を計算し、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議がまとまらなかった場合

相続人同士で行われる遺産分割協議の場で、もしも協議が成立しなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てます。調停では家庭裁判所を交えて協議を続けますが、それでもまとまらない場合は審判に移行し、裁判所の判断に委ねることになります。審判の結果にも納得できなかった場合は「即時抗告の申立て」を行い、高等裁判所、もしくは抗告裁判所の判断を仰ぎます。

特別受益の対象となる財産

特別受益の対象となる財産には次のものがあります。

  • 遺贈
    相続人が遺言書によって遺贈を受けた場合、特別受益に当たります。遺言書には「遺贈」ではなく「相続」と書かれていたとしても、事実上の遺贈とみなされれば特別受益となります。
  • 結婚や養子縁組のための贈与
    相続人が結婚した際、被相続人から持参金や支度金といった形で贈与を受けていた場合や、養子縁組の際に被相続人から財産を受け取っていた場合は、このタイプの特別受益に当たります。ただし結納金や結婚式の費用などは含まれないことが多いです。
  • 生計の資本として受けた贈与
    相続人が起業した際に、被相続人から事業資金の援助を受けていた場合。新居を建てる際に費用の援助、或いは不動産や土地を譲り受けて居た場合。また大学などの学費を援助されていた場合も、特別受益に当たります。

特別受益を受ける可能性がある人は誰?

次の人達は、特別受益を受ける可能性があります。

  • 推定相続人
    「推定相続人」とは、もしも被相続人がその時点で亡くなった場合に、法定相続人になる資格を持つ人のことです。被相続人から多額の遺贈や生前贈与を受けた推定相続人は、特別受益の対象になります。
  • 推定相続人になることが決まっていた人
    生前贈与を受けた後、婚姻や養子縁組によって推定相続人になった人の場合、贈与の時点では推定相続人ではなかったため、特別受益には当たりません。ただし贈与を受けた時点で婚約していたり、養子縁組が既に決まっていた場合は、婚姻後や養子縁組後に受けた贈与と同じように特別受益の対象になります。
  • 代襲者
    被相続人Aさん、子供のBさん、Aさんの孫でBさんの子供Cさんがいて、Bさんが先に亡くなり、その次にAさんが亡くなった場合、生きていれば相続人になるはずだったBさんに変わって、Cさんが財産を受け取ることになります。この時、Cさんのことを「代襲者」。Bさんのことを「被代襲者」と呼びます。
    代襲者は、あくまで被代襲者が受け取るはずだった財産を代わりに受け取るだけですから、もしも被代襲者が生前、被相続人から特別受益を受けていた時には、代襲者も特別受益の対象になります。
  • 相続人の配偶者や親族
    相続人の配偶者や子供、その他の親族は、相続人ではないので、生前贈与を受けていても、基本的には特別受益に当たることはありません。
    しかし贈与の経緯や性質を考慮した時に、実質的には相続人への相続人に対する贈与と認められ、特別受益の対象となる可能性があります。

特別受益の計算方法と持ち戻し

特別受益が認められた場合の遺産分割では、相続財産の金額に、特別受益の金額を加算した上で、その合計金額から法定相続分(または遺言で定められた相続分)を分割していきます。この時の、相続財産に特別受益の金額を加算することを「持ち戻し」。加算後の金額のことを「みなし相続財産」と呼びます

父親が亡くなり、その相続財産700万円を、その子供であるAとBの2人で半分ずつ相続することになりました。

しかしこの時、Aが300万円の特別受益を受けたことが認められたため、その金額を持ち戻し、1000万円のみなし財産を500万円ずつ分けることになります。

Aは、受け取れる500万円のうち300万円を特別受益としてすでに受け取っているのでAの取り分500万円からは特別受益の300万円が差し引かれます

よって実際には、相続財産700万円のうち、Aは200万円、Bは500万円を受け取ることになります

特別受益が法定相続分を超過した場合

特別受益の金額が、法定相続分(または遺言で定められた相続分)を上回っていた場合、相続財産の取り分がマイナスの数値になってしまいます。このような特別受益者を「超過特別受益者」といいます。
しかし超過特別受益者は、マイナスになった金額を他の相続人に返還する必要はありません。これは特別受益を受けた相続者に多くの財産を相続させたいという、被相続人の遺志を尊重する意味合いもあります。

父親の相続財産500万円を、その子供であるAとBの2人で分ける時に、Aが700万円の特別受益を受けていたとしたら、みなし財産は1200万円となり、600万円ずつを分け合うことになります。この時Aは、特別受益として本来の取り分よりも100万円多い700万円を既に受け取っていますが、差額の100万円をBに対して支払う必要はありません

まとめ:特別受益の知っておくべき5つの知識

  1. 特別受益とは
    特別受益とは、相続人が被相続人から受けた、生前贈与や遺贈のことを指します。
  2. 特別受益の請求の流れ
    他の相続人が受けた生前贈与を請求する際には、証拠を集めた上で、遺産分割協議の場でそれを主張します。
  3. 特別受益の対象となる財産
    遺贈によって譲り受けた財産や、結婚時に受け取った持参金、生計の資本として受けた贈与などが特別受益の対象となります。
  4. 特別受益を受ける可能性がある人は誰?
    特別受益者になるのは、基本的には贈与を受けた時点で推定相続人だった人、あるいはその代襲者に限られます。ただし贈与を受けた経緯によっては、相続人の配偶者などが受け取った贈与が、相続人の特別受益として認められる場合もあります。
  5. 特別受益の計算方法と持ち戻し
    特別受益が認められた場合の遺産分割では、みなし相続財産(相続財産+特別受益)の金額から、法定相続分(または遺言で定められた相続分)を分割していきます。