相続財産の一覧表(相続財産目録)の作成方法

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相続財産の一覧表(相続財産目録)は、必ずしも全ての相続において必要ではありません。しかし作成することにより無用なトラブルを回避できたり、相続税の計算に役立ったりするメリットがあります。
今回は相続財産の一覧表(相続財産目録)について、その作成理由や作成方法について解説します。

相続財産の一覧表(相続財産目録)とは

相続財産目録とは、被相続人の相続財産を一覧表にしたものです。被相続人が生前にある程度作成しておくことが望ましいですが、多くは遺族が遺産分割協議のため、あるいや相続税申告のために、相続財産の調査と並行して作成することになります。相続財産目録は、必ずしも必要なものではありません。相続財産がほとんどなく、相続税の申告が明らかに不要である場合などは作成を省略して遺産分割協議書を作成することもできるでしょう。
しかしこのような場合を除けば、相続財産目録は一般的には作成した方が良いです。
また、場合によっては相続財産目録の作成義務が生じるケースもあります。

相続財産の一覧表をつくる理由

相続財産目録を作成した方が良い理由や、作成義務が生じるケースについて解説します。

遺産分割協議を円滑に進められる

相続が発生した場合、通常は法定相続分に応じて相続財産の分割を相続人同士で協議します。これが遺産分割協議です。
しかしこの遺産分割協議を行うにあたって、被相続人の相続財産に何があるのかを相続人の間で共有しておかなければ、話合いを進めることはできません。
そこで話合いの叩き台として相続財産目録があれば、全員が相続財産を把握できるためスムーズに話し合いを進めることができます。
また財産を早期にオープンにすることにより、他の相続人から「本当は財産を隠しているのではないか」などと余計な疑いを向けられることも避けられます。

遺言執行者の場合は作成義務がある

遺言執行者に指定された人には、相続財産目録を作成して相続人全員に交付する法律上の義務が生じます。これは遺言執行者に、被相続人の遺言内容を実現するため必要な行為や手続きを行う役割があるためです。遺言執行者の指定は、遺言書によって行われる場合や、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらう場合があります。もし指定された場合は断ることも可能です。

相続税申告の要否判断のため

相続税の申告が必要となった場合、相続税の申告書には相続財産目録を作成し添付する必要があります。しかし相続財産の合計評価額が基礎控除以下である場合、相続税はかかりません。相続税の基礎控除とは、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。
つまり相続財産目録を作成することによって、相続財産の合計評価額がおおむね基礎控除以下に収まるかどうかの判断を行うことができるのです。
注意が必要なのは、相続税の申告を要件とする相続税法上の特例を適用する場合です。
特例を適用したことによって相続財産の合計評価額が基礎控除以下となる場合は、例え相続税が0円であっても相続税の申告が必要となります。

申告が必要となる相続税法上の特例とは主に、

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者の税額軽減措置の特例
等です。

相続税の計算にも役立つ

相続財産は現金一括納付が原則であるため、不動産など現金以外のものを相続した場合は税金が払えるかどうかも考慮しなればなりません。
そこで相続財産目録を活用すれば、相続する財産評価額の合計も容易に把握できるため納税額の計算にも役立ちます。
ただし、みなし相続財産のように相続財産目録には記載しないけれど相続税の課税対象となる財産があることには注意が必要です。みなし相続財産は非課税限度額が大きいため、多くの場合非課税となりますが税計算の際には忘れないようにしましょう。

記載が必要なもの

実は「相続財産」がどのようなものを指すかについて、民法、相続税法などに法律上の規定はありません。一般的な見解としては「およそ金銭に見積もることのできる経済的価値のあるもの全て」が財産と考えられており、不動産や動産のほか無形の財産やマイナスの財産まで広く相続財産に該当するとされています。

相続財産に該当するもの

相続財産に該当するものには、

  • 現金、預貯金
  • 不動産と不動産上の権利
  • 有価証券
  • 事業用財産
  • その他

などがあげられます。


それぞれの具体例は下記のとおりです。

現金、預貯金

現金、普通預金、当座預金、定期預金、郵便貯金、定期積金、小切手などが該当します。

不動産と不動産上の権利

土地(宅地、農地、山林など)や建物(家屋、店舗)、借地権、借家権などが該当します。

有価証券

株式や公債(国債など)、社債、信託等の受益証券などが該当します。

事業用財産

主な事業用財産は下記のとおりです。

  • 事業用の機械装置、器具・備品等の減価償却資産や営業権、特許権、著作権など
  • 商品、製品、原材料、仕掛品など
  • 債権(売掛金、受取手形、貸付金など)

その他

上記以外にも家具、什器、電話加入権、書画、骨董品、宝石、車両、未収の配当金や地代家賃、著作権、損害賠償請求権などが該当します。

マイナスの相続財産

負債も相続財産となります。負債には借金、住宅ローン、未払いの地代家賃や医療費、税金、買掛金、支払手形などが該当します。

相続財産に含まれないもの

相続財産に含まれないものに、一身専属権というものがあります。一身専属権とは、被相続人個人に専属する権利であるため相続されない権利です。具体的には代理権、使用貸借権、生活保護受給権などが該当します。
また、みなし相続財産に該当する生命保険金や死亡退職金については、課税対象であるものの相続財産には含まれません。

相続財産の調査

相続財産目録を作成するには、まずは相続財産の調査を行い相続財産の存在を明らかにすることが必要です。主な相続財産の調査方法は下記のとおりになります。

 預貯金

預貯金はまず通帳を確認し、残高を明らかにしましょう。通帳がないインターネットバンキングなどは、口座開設の手がかりとなる金融機関からのハガキやメールを遺品の中から見つけ、ある程度金融機関に目星を付けることが大切です。金融機関が判明すれば、指定された必要書類を用意することで調査に応じてもらえます。
一般的に必要となる書類は、被相続人の死亡を証明する除籍謄本や調査の請求者が相続人であることがわかる戸籍謄本などです。

不動産

不動産は固定資産税課税明細書があれば確認できますが、見つからなければ役所で「名寄帳」を取得することにより確認することも可能です。名寄帳とは、一筆一棟ごとの不動産を所有者ごとにまとめた台帳のことで、課税対象となる不動産であれば把握することができます。
これらの情報を元に、法務局で登記事項証明書を取得すれば完了です。

有価証券

株式などは、証券会社や信託銀行に問い合わせが必要です。まずは被相続人の遺品から、証券会社等からのハガキや郵便物を確認し、その会社に連絡をして「取引残高報告書」を発行してもらいましょう。取引残高報告書を見れば、被相続人がその会社を通じて購入した株式の銘柄と持ち株数が判明します。

負債

負債の調査は重要です。もしプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多ければ、相続人が借金を負う可能性もあります。住宅ローンや自動車のローンの有無は、預貯金口座からの振替状況などでほとんど判明します。借入先の金融機関に依頼して借入残高の証明書を発行してもらいましょう。とにかく借入金がないかどうかは慎重に調査を行う必要があります。
遺品に借用書がないか、あるいは預貯金口座から毎月定額で支払われている不明な支出がないかなど細かくチェックしましょう。相続放棄や限定承認の手続きを取れば、マイナスの財産がプラスの財産を上回ることは回避できますが、この手続きには相続開始の日から3ヶ月以内という期限があるため注意が必要です。

財産の種類別の記載方法

遺産分割協議に使用する相続財産目録の記載方法に、決まりはありません。何の財産がどれくらいあるのかが分かれば大丈夫で、一覧表も任意の様式で構いません。
それでは財産の分類ごとに記載例を紹介します。

不動産

不動産の財産目録で記載すべき項目は下記のとおりです。

  • 相続財産の所在地、家屋番号
  • 種類(居宅、宅地、山林など)
  • 地積や床面積
  • 相続分(持ち分があれば記載
  • 概算評価額

登記事項証明書を取り寄せていない場合は、わかる範囲でとりあえず記入しておきましょう。大切なのは、何の財産がどれくらいあるかの情報を相続人同士で共有することです。評価額については、相続税の評価額を計算して記載する必要はありません。
固定資産税課税明細書に記載されている固定資産税評価額を参考に記載しましょう。

  • 相続財産の所在地、家屋番号
    東京都○○区○○町11番22号
    家屋番号33番
  • 種類
    居宅
  • 床面積
    85.1㎡
  • 相続分
    被相続人○○ ○○
    (共有持分2分の1)
  • 概算評価額
    25,000,000万円(固定資産税評価額より)

預貯金

預貯金の場合は、残高が正確に把握できるため残高証明書などで確認しましょう。
また預金は普通、定期、定額、積立等などの預金種別や口座番号(記号番号)も記載しましょう。

  • 種別 定期
  • 銀行名・支店名 楽天銀行
  • 口座番号 100001
  • 金額 1,000,251円

有価証券

有価証券の場合は、

  • 種別(上場株式や投資信託等)
  • 証券会社名、銘柄
  • 証券番号
  • 数量(株・口)

などを記載すればOKです。

  • 種別 上場株式
  • 証券会社名、銘柄 株式会社AA
  • 証券番号 ○○
  • 数量(株・口) 100株

負債

負債については

  • 種別(借入金、住宅ローン等)
  • 支払相手の氏名又は名称
  • 残債額
は必ず記入しましょう。毎月の返済額も記録しておくと、負債の調査漏れがないか通帳と付け合わせることができるためおすすめです。

  • 種別 住宅ローン
  • 支払相手の名称 BB銀行
  • 残債額 4,000,000円
  • 毎月返済額 120,000円

相続税の申告書に添付する場合は評価額を正確に

相続税の申告を行うために作成する相続財産目録の場合、相続税法上の財産評価方法に則った評価額を記載しなければなりません。専門家でなければ難しい計算も多いため、相続税の申告を行う場合は専門家に相談することがおすすめです。

まとめ

相続財産の一覧は、法律上の義務がない限り作成は必須ではありません。
しかし円滑な遺産分割協議を行うため、あるいは相続税の計算をスムーズに行うために可能な限り早期に作成することをおすすめします。
相続税の申告が必要な場合は、ぜひ専門家に相談しましょう。