【成年後見制度】概要・必要書類・選任方法・注意点

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成年後見人という言葉を聞いたことはありますか?近年高齢化が進み、高齢者の事故や認知症など様々な問題が起こっています。そんな中、成年後見人制度という言葉を目にしたり耳にしたりする機会が増えてきていると思います。成年後見人制度は高齢者や障害を持った人々を援助する制度ですが、その詳細や後見人を選任する方法、必要書類や費用、後見人に支払う報酬額などをまとめて今回はご紹介していきます。また、相続と成年後見人の関係や注意点なども併せて解説していきます。

成年後見制度とは?

生活をする上で何かを買ったり、契約を結んだりといったことを人々は日常的に行います。普段何気なく行っていることでも、そういった行為の責任を当事者は負うことになります。生活面でも法律面でも、物事に対して理解することができなければ損をしたり不利益を被ったりする可能性が出てきます。高齢や認知症、知的障害、精神障害などが原因で判断能力の低下、または欠如が見受けられる場合、その人物に対して保護や支援を行う制度が、成年後見制度です。
成年後見人制度は、

  1. 法定後見制度
  2. 任意後見制度
上記2種類の制度に分けられます。法定後見制度とは、判断能力が不十分だと診断された人に適用され、法律面や生活面でサポートを受けることができます。一方、任意後見制度では、判断能力が十分である人にも適応されます。あらかじめ自分で後見人を指定したり、支援の範囲を決めたりすることができます。後見人には判断能力が十分でないといった理由から生活に支障が出てしまう人々の生活を守り、本人の意志を尊重しながら安心して暮らせるよう、サポートする役割があります。

成年後見人を選任する方法は?

成年後見制度を利用する場合、当然後見人がいなくては成り立ちません。この成年後見人は家庭裁判所が選任します。制度を利用しようとする人物にどのような障害があるのか、それに対してどのような支援や保護を行うのかなど、本人の状況・事情に応じて選任されます。誰を後見人として選任するか、希望を事前に伝えることはできます。
また、任意後見制度ではあらかじめ後見人を決めておくことができますが、実際に後見制度が適応された際には、家庭裁判所が選任した任意後見監督人が任意後見人を監督することになります。後見人には、親族以外も選任される場合があります。その場合、専門職後見人と言われる法律や福祉の専門家。公益法人等の第三者が候補に挙がります。成年後見人は複数人選ぶこともでき、先述したような成年後見監督人なども選ばれることがあります。
成年後見人になるための必要な資格や特別な研修はありませんが、後見人になることができない人は存在します。後見人になれない人は以下の通りです。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所ですでに解任された法定代理人や、保佐人、補助人
  • 破産者
  • 行方が不明な人
  • 被後見人に訴訟をしている人、した人、その配偶者、直系血族

成年後見人の選任手続きは?

成年後見人制度を利用することで得られるメリットとして、被後見人の死後に財産を分割する際もスムーズに手続きを行うことができる、というものがあります。そのためにも成年後見人の選任手続きについてしっかりと理解しておきましょう。ここでも任意後見か法定後見かで手続方法に若干の違いが出てきます。
申し立てをするところは家庭裁判所です。被後見人の住んでいる地域を管轄する家庭裁判所で申し立てを行うことになりますが、申し立てができるのは

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族(例:親、子供、孫、兄弟姉妹など……)
上記の人物です。
手続きにかかる費用や必要書類については後に書いていきますが、申し立てをしたら次は家庭裁判所の調査官によって事実調査が行われます。ここでは被後見人や後見人候補者からそれぞれ事情や意見を聴取します。
次に行われるのが審判です。基本的には希望した成年後見人候補者がそのまま選ばれることが多いですが、最終的な決定をするのは家庭裁判所になるので、場合によっては希望した候補者以外の人物が後見人になる可能性もあります。
この判断については不服申立てをすることは不可能です。特に不服申立てがないようであれば、審判書を受領した2週間後に後見人が確定します。審判が無事終了すると、成年後見登記がなされます。後見登記を確認できるのは、本人とその配偶者、親や子供などの四親等内の親族、または成年後見人などです。

手続きにかかる費用は?

成年後見人制度では、各家庭裁判所や制度によって申し立てにかかる費用や後見人に支払う報酬額が異なります。目安として必要となる費用を以下にまとめました。実際に申し立てを行う場合には、申し立てをする家庭裁判所に直接連絡をして確認するようにしましょう。
法定後見制度でかかる費用は以下の通りです。

  • 収入印紙
    収入印紙は800円ですが、保佐人や代理人に同意権または代理権を付与する審判の場合、申し立てごとに800円がかかります。
  • 登記手数料
    登記手数料は2,600円です。
  • 郵便切手
    郵便切手はおよそ800円〜ですが、詳しい金額については申し立てをする家庭裁判所にご確認ください。
  • 鑑定料
    鑑定とは、医師により行われる、被後見人の判断能力を医学的に診断することです。鑑定が行われるケースは非常に少ないですが、するとなった場合の費用は10万円以下とされています。
これらの費用を工面するのが難しい場合には、日本司法支援センターが行う費用の立替えの援助、あるいは市町村が出している助成金を受けられる可能性もあるので、一度問い合わせてみるのもいいでしょう。

任意後見制度でかかる費用は以下の通りです。

  • 公正証書作成の基本手数料
    基本手数料は11,000円です。
  • 登記嘱託手数料
    こちらは1,400円かかります。
  • 法務局に納付する印紙代
    こちらが2,600円です。
任意後見では上記以外でも、当事者らが受け取る正本等の証書代や登記嘱託書を郵送する際の切手代などが必要です。また、任意後見監督人を選任する申し立て費用も別で必要になります。

手続きに必要な書類は?

成年後見人の手続きに必要な書類も、2種類の制度ごとに見ていきましょう。
法定後見制度で必要な書類

  • 申立書
    家庭裁判所が指定した書式の用紙を家庭裁判所で入手することができます。
  • 診断書
    診断書も指定された書式の用紙に記入してもらいましょう。
  • 本人(被後見人)の戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、戸籍の附票
    本籍地の市区町村役場で各1通ずつを用意します。
  • 成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、身分証明書
    本籍地の市区町村役場で各1通ずつを用意します。

任意後見制度で必要な書類

  • 本人関連書類
    本人(被後見人)の戸籍謄本、住民票、身分証明書を用意します。
  • 任意後見人関連書類
    任意後見人の住民票、身分証明書を用意します。
  • その他
    場合によっては診断書や不動産の登記簿謄本、財産目録などが必要になります。
また、専門家による申立書の作成を代行するサービスなども展開されており、金銭面で余裕がある方は利用しても良いでしょう。

成年後見人の報酬額は?

後見人に支払う報酬は、各家庭裁判所や制度ごとに異なります。任意後見制度では、被後見人と後見人が契約する際に決めた金額を支払うことになります。一方、任意後見監督人は家庭裁判所が決めた金額を支払います。法定後見制度では、家庭裁判所が決めた金額を支払うことになります。報酬額がどの程度になるかは、家庭裁判所が被後見人の状況とそれに応じたサポートの諸々を加味して判断します。報酬は被後見人の財産から支払われますが、これは自動的にもらえるものではなく、きちんと申請してもらう必要があります。申請に関しては義務ではないので、親族が成年後見人の場合には申請もしない、報酬も支払わないというケースも多いです。

報酬額の相場は?

各家庭裁判所によっても報酬額が異なるということはすでに書きましたが、相場は大体2〜6万円ほどです。東京家庭裁判所では、基本報酬が月額2万円となっています。管理財産額が1,000〜5,000万円未満の場合は、月額3〜4万円。5,000万円以上の管理財産額がある場合には、月額5〜6万円となります。

後見人が専門職の場合

後見人が弁護士や司法書士、社会福祉士などである場合も報酬は発生します。この場合でも後見人が報酬額を決定することはできないので、平均月額2〜3万円の報酬額を支払うことになります。金額から見てもわかる通り、後見人の報酬だけでは生計が立てられないので専門家は仕事の一つとして後見人を引き受けています。

遺産分割協議と成年後見人

ここでは成年後見人制度を利用した場合の相続についてご説明していきます。先ず、被相続人が亡くなり財産を分割するとなると相続人全員で相続に関する話し合いを行います。これを遺産分割協議と言い、被相続人が遺言書を書き残していない場合などには原則行われることになります。
しかしこの遺産分割協議は相続人が全員参加することで成立します。これは法律で決められているので、相続人が不参加あるいは相続人に適切な判断能力がない人がいる場合、遺産分割協議は無効になってしまうのです。
例えば、認知症を患っていて物事に対して正常な判断ができない人、未成年者などが相続人に含まれている場合は遺産分割協議が無効になります。
このような場合でも遺産分割協議を行うには、相続人の代理となる人物が必要です。遺産分割に参加できる代理人として挙げられるのは、弁護士や成年後見人です。つまり認知症や何らかの障害を抱えている相続人に、成年後見人を選任することで遺産分割協議を行うことが可能になります。

成年後見人を選任する際の注意点

後見人が被後見人に代わって遺産分割協議に参加する場合、原則被後見人の法定相続分を確保するために協議に臨みます。しかし後見人と被後見人の双方が法定相続人に含まれ遺産分割協議をする場合や、後見人が被後見人にとって不利益な行動を取った場合などは「利益相反行為」に該当してしまいます。こういった利益相反行為に該当する場合は、家庭裁判所が選任した特別代理人が代理権を行使することになります。後見人が代理人として適切でないと判断されたら、「特別代理人選任」を申し立てましょう。家庭裁判所に申し立てると、書面での紹介や事情聴取などがある可能性もあります。
既に後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が被後見人を代理するため特別代理人の選任は必要ありません。成年後見人には被後見人の生活や財産を守る役割が与えられています。この制度によって認知症や精神障害などで生活に苦労している人々が守られているのです。ですから後見人が被後見人の生活を脅かしたり財産を減らしたりする行為は禁止されています。法定後見人か任意後見人かで選任の方法は異なりますが、信用できる人物、被後見人に代わって要所々々で適切な判断ができる人物を選ぶようにしましょう。

まとめ

  • 正常な判断をすることができない人が法定相続人にいる場合、遺産分割協議は無効となる
    認知症や精神障害など、何らかの障害や事情で判断能力に欠けると認められた人は遺産分割協議に参加することはできません。また、遺産分割協議は相続人全員で行わなければいけないので、その時点で無効になってしまいます。
  • 費用がかかってしまう、手続きや必要な書類が多いなど、少し面倒ではあるが、遺産分割協議をスムーズに進めるためにも適切に対処したほうが良い。
    成年後見人制度を利用する際には、手続きに時間がかかったり必要書類を集めたりするのに苦労することもあります。しかし後見人がいることで被後見人の生活や財産が守られ、また被後見人が相続人として参加する遺産分割協議でスムーズに話し合いを進めることができるなどメリットも多いです。成年後見人制度をきちんと理解して適切な人物を後見人として選任しましょう。
成年後見人制度について詳しく知らないという人はまだまだ多いです。身内に高齢で生活に苦労している、障害を持っている、など問題を抱えている人がいる場合は、しっかり学んでおくべき事柄です。また、自身がいつか年を重ねた際に相続の問題で親族に迷惑をかけないようにするためにも、今から成年後見人制度について理解しておくといいでしょう。