日本人には馴染みのある仏壇ですが、いざ自分が管理する立場になってみると、正しいお供え物や並べ方について、意外と知らなかったという声もあります。本記事では、仏壇に置くお供え物の種類と、仏壇の基本的な飾り方について簡単に紹介していきます。
仏壇のお供え物のルールとは
仏壇のお供え物には、あまり厳格なルールはありません。故人が好きだったものをお供えすると良いでしょう。ただし仏教で五辛とされている食べ物(ニラ、ネギ、ニンニク、らっきょう、はじかみ)や、肉や魚など殺生を連想させるものは避けるようにしましょう。
仏壇のお供え物の種類
お線香
お線香を焚くという行為には、焚いた人の心を浄化したり、仏様に気持ちを伝えるという意味合いがあるとされています。さらに故人が極楽浄土へ向かう旅の途中だとされる四十九日までの期間は、線香の香りが故人の食べ物になるといわれています。
お線香の消し方
線香の火を消す際には、線香を縦に振って消したり、左手で仰いで消すようにしましょう。口で吹いて消すのはマナー違反になります。
お線香の本数
お線香を焚く際の本数は、宗派や地域によってそれぞれ異なります。他所の家の仏壇でお線香を焚く時には、その家の習慣に合わせるようにしましょう。
仏花
仏壇にお供えする花のことを仏花といいます。厳しい自然環境に耐えて美しく咲く姿を、仏の修行に耐える人間の姿になぞらえ、供えられるようになったとされています。
仏花といえば菊の花を連想される方も多いと思いますが、季節の花や故人が好んでいた花も一緒に供えるとなお良いでしょう。生花を供え、傷んでくる前に新しいものに替えるという供え方が一般的でしたが、近年では生活スタイルの変化から、傷まないように加工されたプリザーブドフラワーをお供えする方も増えてきています。
仏花の飾り方
仏花は、仏壇用の花瓶である、花立という仏具に飾ります。花立は2つで1対となり、2つの花立には同じ花束を供えるのが一般的です。そのため仏花を購入する際には、同じ花束を2束購入するようにすると良いでしょう。また仏花は、花を仏様の方に向けるのではなく、お参りする側、つまり私たちの方に向くようにして供えます。これは仏様から私たちに向けられる慈悲の心を表現するためとされています。
仏花として飾ってはいけないもの
バラやアザミなどはじめとする棘のある植物や、アサガオのように蔓のある植物、ヒガンバナのような毒のある植物は、仏花として適切ではないとされています。またユリのように首から落ちる花も、死を連想させるため仏花には適しません。また赤い花も、死を連想させるため避けるようにしましょう。
仏花についてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
灯燭(とうしょく)
灯燭とはロウソクのことです。お線香に火を灯す役割を担いますが、それだけではなく、周囲を明るく照らす灯燭の火自体が、人々を導く仏様の知恵を象徴していると考えられています。
近年はユニークな形をしたものや、火を用いずLEDで照らすタイプの灯燭も登場しています。生活スタイルや故人の好みに合ったものを選ぶと良いでしょう。火を消す際にはお線香と同じく、息を吹きかけていけません。手で仰ぐか、専用の道具を用いて消しましょう。
浄水
仏壇に供える水のことを浄水といいます。華瓶(けびょう)という器に注ぎますが、故人が生前愛用していたコップや湯呑などを使う方も多くいます。水道水で充分ですが、毎日取り替え、絶やさないようにしましょう。ちなみに浄土真宗の場合は、浄水はお供えしません。
飲食(おんじき)
仏壇に置くご飯のことを飲食といいます。仏飯器という器に少量のご飯を盛り付けてお供えします。使用する仏飯器やご飯の盛り付け方は地域や宗派によってそれぞれ異なります。
仏様が食べているのはご飯そのものではなく、炊きたてのご飯から立ち上る湯気であるとされていますので、ご飯が炊けたら誰よりも早く仏様に出し、冷めて湯気が立たなくなったら傷まないうちに家族で食べましょう。また、これも宗派によりますがご飯だけではなく故人の好物やお酒、煙草などをお供えしてもかまいません。
仏壇の並べ方
集合住宅向などで人気のミニ仏壇など、床の間や神棚と向い合せになる配置もいけません。また単純に仏壇の傷みを避けるために、直射日光や湿気、強い冷気に晒されることのない場所に置くようにしましょう。エアコンの風が直接当たる場所も避けたほうが良いですね。
仏壇を置く向き
基本的にはどの方向に置いても構いませんが、宗派によっては厳密に決められている場合もあります。たとえば浄土真宗、浄土宗、天台宗など、阿弥陀如来を本尊としている宗派は、阿弥陀如来が居るとされている西側に向けて祈るため、仏壇は東を向くように置くべきとしています。
仏壇を置く向きについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
仏具の並べ方
仏具の並べ方は本来、地域や宗派によって異なりますが、最上段の中央に本尊を置くなど、基本的な部分さえ抑えておけば、近年は必ずしも決まり通りの方法でなくても構わないとされています。とはいえ、宗派の決まりに従った置き方をしたいという場合は、檀家のお寺の並べ方を参考にすると良いでしょう。
灯燭の置き方
灯燭には様々なタイプのものがあると前述しましたが、基本的なものは白色のものと朱色のものの2種類です。白色のものは普段遣い、朱色のものは彼岸や命日、月命日など、特別な日に使うものとされています。また、小さなお子様やペットがいるので火を使うのは不安だという場合は、LEDタイプの灯燭を利用すると安全です。
おりんの置き方
おりんは「鈴」または「輪」と書きます。おりん本体と、ならすためのりん棒、下に敷く座布団をセットで購入しましょう。音を鳴らすことで魔除けや、お祈りしていることを故人に知らせるという意味合いがあります。おりんを置く際に注意したいことは、日常的な手入れです。おりんは金属のため放って置くと色が変わり、見栄えが悪くなってしまいます。手入れの際には、仏具店や通販サイトで買うことのできるおりん専用のクリーナーを使うのがおすすめです。
掛け軸の飾り方
掛け軸は仏像の中心である、本尊としての役割を持っています。3枚1組で飾られるのが一般的です。本尊が仏像である場合は、仏像の両端にそれぞれ1枚ずつの掛け軸を配置します。本尊を掛け軸にするか、仏像にするかは、特に決まりはありません。
経机(きょうづくえ)
経机とは、仏壇の前に起き、香炉や灯燭、線香立て、おりん、数珠などを置くための机です。仏壇の前において使うタイプを連想されることが多いですが、折りたたみ式でコンパクトに収納できるタイプのものや、経机そのものが引き出し式になっているものもあります。住居のサイズや生活スタイルに合ったものを選ぶと良いでしょう。
香炉(こうろ)
香炉とはお香を焚くための器です。仏教の起源であるインドでは、悪臭を防ぐために様々な香料を調合した香りをまとう風習があり、それが仏教の風習でも使われるようになったといわれています。
仏壇に置く香炉には、中に香炉灰を敷き、主にお線香を焚く際に使用します。香炉の中にお線香の燃え残りがあると、線香が立ちにくくなったり、灰が飛び散りやすくなるため、定期的に手入れして燃え残りを取り除く必要があります。手入れに使用する道具は仏具店などで購入することができます。
本尊
仏壇の中でもっとも重要な役割を担うのが本尊です。最上段の真ん中、仏壇の中でもっとも目につく場所に安置します。前述の通り、掛け軸にする場合と、仏像にする場合とがあります。いずれの場合も購入した際には、僧侶による魂入れを行う必要があります。魂入れをすることで、本尊が単なる物から信仰の対象に変化します。また安置する本尊は、宗派によって異なります。
- 阿弥陀如来
浄土真宗、浄土宗、天台宗などで本尊とされているのが、阿弥陀如来です。無限の光と無限の寿命を持ち、あらゆる人に救いを届ける仏といわれています。
- 釈迦如来
仏教の開祖である釈迦その人です。曹洞宗、臨済宗などで本尊とされています。
- 大日如来
真言宗では大日如来を本尊としています。森羅万象、宇宙そのものであるとされています。
打敷
打敷とは、仏壇の前卓の下に敷いて使う布のことを指します。お盆やお彼岸、法要などの特別な日に使用されるものです。もともとは釈迦が座る高座に敷かれていた布を模したものが起源だとされています。浄土真宗では三角形の打敷が使われ、これを三角打敷といいます。それ以外の宗派では四角形の打敷を用います。また故人が亡くなってから四十九日までの期間は白いものを使用します。
まとめ
お供え物のルール
- 仏壇のお供え物に厳格なルールはないため、故人が好きだったものを供える
- 五辛とされるものや、殺生を連想させるものは避ける
お供え物の種類
- お線香には焚いた人の心を浄化したり、仏様に気持ちを伝える意味合いなどがある
- 仏花を供えるのは、自然環境に耐えて咲く姿を修行に耐える人間になぞらえているため
- 灯燭の火は、人々を導く仏様の知恵を表している
- 浄水は毎日取り替え、絶やさないようにする
- 飲食は、ご飯そのものではなく、ご飯から立ち上る湯気が仏様の食事になる
仏壇の並べ方
- 基本的な灯燭は白(普段使い)と朱色(特別な日)の2種類
- おりんは金属製のため、日々の手入れが必要
- 掛け軸は本尊としての役割も持ち、仏像が本尊の場合は両端に1枚ずつ掛ける
- 経机は住居の広さや生活スタイルに合ったものを使う
- 仏壇の香炉は線香を立てるために使い、定期的に燃え残りの除去をする
- 本尊は宗派によって異なる
- 打敷は彼岸や法要など特別な日に使用する